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2016 - 2017 学期中の過ごし方 Bの場合 [受講ガイド(2016 - 2017)]

LLM class of 2017Bです。履修した科目の内容等を簡単に記しますので,来年度以降Vanderbilt law schoolに在籍される方や受験を検討されている方にとって何かの参考になれば幸いです。なお,個人的にはTOEFLの点数があまりよくない状態で留学生活を開始し,授業だけでなく生活面でもいろいろと苦労をしましたが,無事に5月にはLLM課程を修了しました。本校は,少なくとも日本人にはTOEFLの点数がそれほど高くなくても合格を出しているようですし,入学した後のことはやってみれば何とかなりますので,点数が低いことで悩んでいる方も積極的に出願してみることをお勧めします。


1.秋学期


 

AM

PM

Contracts

 

Contracts

 

Legal Research

Contracts

 

Constitutional Law I

Legal Writing

Constitutional Law I

Legal Writing



(1) Life of the Law (2単位) Daniel Gervais教授


通常の授業期間の開始前から開講し,秋学期が始まってからも数回授業があった後,学期の途中でFinal Examが行われました。授業内容は「留学生のためのアメリカ法入門」といったところで,ロースクールでの授業の受け方や,判例の読み方,法的議論における判例の使い方,アメリカの統治機構の概要,法源,法解釈の方法論,法と経済学入門等の内容を扱いました。授業の進め方としては,「車両を公園に乗り入れてはいけないというルールがあるとして,そのルールはどこまで適用されるのか?自転車は?セグウェイは?スケートボードは?ベビーカーは?車椅子は?その理由は?」というような,どこかで聞いたことがあるような話題等を用いながら,秋学期から始まる他の授業の体験版という趣旨で,適宜学生をcall onしながら議論が進められていきました。Final Examは,授業の内容を復習しておけば十分解答可能な内容でした。ちなみに,教科書として使われたのは本校のTracy George教授が執筆(共著)した「ロースクール生活の手引き」といった内容の本で,この本は中国語版も出版されているようです。


(2) Legal Research and Writing (2単位)


LLM生が少人数のセクションに振り分けられ,リサーチとライティングそれぞれの教授から指導を受けます(ライティングにはJDTAも加わります。)。リサーチでは,この授業のために用意されたオリジナル教材を使い,LexisWestlawBloombergという3つのデータベースを活用して必要な情報を集めるための手法を学びました。正しいコマンドを入力する必要があるなどやや複雑なところもありましたが,基本的には日常的に行っているGoogleの検索等と同じ考え方で対応できるため,そこまで負担にはなりませんでした。これに対して,ライティングでは,細かな論述の作法を守りながらCUOM (Closed Universe Office Memorandum)OUOM (Open Universe Office Memorandum)という2本のペーパーを作成するのに一定の作業量が必要になり,他の授業の予習復習にも時間をかけなければならないことから,提出期限近くには時間のやり繰りに苦労しました。なお,Barを受ける場合には,MPT (Multistate Performance Test)というリーガルライティングのような試験も課されるため,授業での起案はその練習にもなるかと思います。


(3) Contracts  (4単位) Rebecca Allensworth教授


L必修。LLMでも多くの学生が履修していました。ケースブックを用いて,代表的な判例を参照しながら契約法の基本的な概念を検討していきます。アメリカ法における最も基礎的な科目の一つである契約法がどのような考え方に基づいて成り立っているのかを具体的事案に即して理解することができた充実した授業でした。授業は典型的なソクラテスメソッドで,毎回,教授が次々と学生をランダムにcall onし,その回答に応じて議論を発展させていきました。少なくともcall onの回数についてはJDLLMで区別はなく,だいたい週2回のペースで順番が回ってきましたが,教授は学生からのどのような回答でも引き取って議論を進めてくれるので,自分なりに考えて答えれば特に問題ありません(ただし,予習が不十分な場合はその限りではありません。)。成績評価も,LLMに対して厳しいということは特にないようでした。なお,他の教授はわかりませんが,少なくともAllensworth教授は契約法の基本的理念を重視した授業を展開しており,その意味では,アメリカ契約法の基礎を骨太に学ぶことができる樋口教授の『アメリカ契約法』という本を一読しておくとベースの部分の理解が容易になるかもしれません。ちなみに,今年度は,ハロウィンには学生の一部だけでなく教授も仮装をして教室に登場し,学生にお菓子を配ってくれました。


(4) Constitutional Law I (3単位) Tim Meyer教授


日本でいえば憲法の統治機構に相当する授業です。司法権の役割,連邦政府と州との関係,大統領の権限等について学びました。この授業を履修したことで,アメリカ建国以来の統治機構の発展の歴史や現状,アメリカ式の三権分立やFederalismの在り方及びその課題等,アメリカという国の形に対する理解がだいぶ深まったと思います。もっとも,日本と同じく抽象的な議論が展開されがちな憲法の授業で使われる単語には難しい英語が多く,また,アメリカの歴史や社会の在り方について子どもの頃から常識として学んできているアメリカ人の学生とは違い,バックグラウンドの知識も不足している私にとっては,理解が容易な科目ではなく,予習復習に多くの労力を費やしました(他のLLMの学生も難しいと感じていたようでした。)。授業は学生をランダムにcall onし,一人の学生との比較的長い問答を通じて議論を展開させていきましたが,基本的にはJDの学生を指名する方針のようでした。なお,Meyer教授はかつて,トランプ政権下で任命されたGorsuch連邦最高裁判事のlaw clerkを務めており,Gorsuch判事の任命に際しては上院の公聴会でも証言したようです。


2.春学期


 

AM

PM

 

Torts

 

Torts

Criminal Law

Evidence

Torts

Criminal Law

Evidence

Professional Responsibility

Criminal Law

Evidence

 



 (1) Professional Responsibility (2単位)  David L. Hudson, Jr.教授


法曹倫理に関する授業。授業では,教授がABA (American Bar Association)のモデルルール(他の法分野と同じく,実際のルールは州ごとに異なります。)の中から重要なトピックを選び,具体的なケースを交えながら解説していきました。教授の専門がFirst Amendmentであるため,この分野に関係する広告規制等は比較的詳しく扱いましたが,Barを受ける場合,この知識は憲法の試験勉強としても役立つかもしれません。授業はほぼ完全に一方的なレクチャーで,call onはありませんでした。何度かクラス全体に問いかける形で学生に意見を求めたことがありましたが,それに応じたか否かで成績に影響はなかったように思います。教材は,教授が執筆した書籍とABAのモデルルール集がテキストとして指定され,授業中はパワーポイントを使ってレクチャーが進められました。Final Examは,授業にきちんと出ていれば十分解答可能な内容でした。


(2) Criminal Law (3単位) Nancy King教授


L必修。Common Law及びModel Penal Codeにおける基本的な(州の)刑法ルールの内容やその根拠等を検討しました。教授はとても教育熱心で,学生をグループに分け,引率して州の刑事収容施設の見学にも連れて行ってくれました。3単位という限られた時間のため,理論的に深く突き詰める議論はできませんでしたが,ケースブックに加え,教授お手製の詳細なシラバス(100頁以上)とポイントがまとめられたPPTのスライドを活用した手際のよい授業が展開されるため,アメリカ刑法特有の考え方を理解するには十分な内容だと感じました。授業中には,ルールに対する理解を深めるためにその具体的な適用を練習する機会も豊富に設けられていました。なお,King教授は春学期にCriminal Procedure (Adjudication)も開講しており,こちらもおそらく充実した授業が展開されていたのではないかと思いますが,私は個人的にInvestigationAdjudicationを一貫したカリキュラムのもとで学びたかったこと(秋学期にInvestigationは受講していませんでした。),また,複数の教授の授業を受けた方が学ぶことが多いのではないかと考えたことから,Criminal Procedure (Adjudication)は受講しませんでした。


(3) Evidence  (4単位) Edward Cheng教授


主に連邦証拠規則(Federal Rules of Evidence)の内容を学びます。Cheng教授は本校屈指の人気教授で,教授陣の中でもはじめてロースクールの卒業式のspeaker2度選ばれたほどです(2度目が2017年度でした)。今学期も,大教室で約100名の学生が受講しました。授業の内容は非常に明快でかつ理論的であり,裁判所の判断についても筋が通らないところは的確に指摘がなされます。発音も明瞭で聞き取りやすいです。授業の内容は,関連性,性格証拠,伝聞,Confrontation Clause,専門家証人,AuthenticationPrivilegeという証拠法の重要トピックを網羅するスタンダードなものだったと思いますが,教授自身が現在,コロンビア大学で統計学の博士課程に在籍していることもあり,科学的証拠について扱った際には比較的高度な議論も展開されていました。授業の進め方は,トピックごとに規則の内容や基本的な考え方を教授がレクチャーした後,主にケースブックに掲載されている練習問題等(法廷ものやドキュメンタリー映画のワンシーンも使われていました。)を素材に学生をcall onして回答を求める形で,具体的な適用について学ぶというものでした。全般的に,日本の法廷でも活用することができそうなアイデアをたくさん得られた授業で,個人的にはロースクールで履修した中で最も有用な授業だったと感じています。なお,教授はExcited Utteranceという証拠法ポッドキャストを配信しており,これは日本からも聴くことができると思いますので,興味のある方は一度検索してみて下さい。


(4) Torts (4単位) Tracy George教授


L必修。不法行為法の基礎について,ケースブックを用いて学びます。不法行為法は契約法と並ぶアメリカ法の基礎科目で,アメリカ法の基本的な考え方を学ぶ上では重要な科目であり,実際,アメリカの法律家なら誰でも知っている有名判例を含む重要基本判例を参照しながら不法行為法の基本的な考え方を学ぶことができたことは有意義でした。ただ,個人的には日本でも不法行為法は必ずしも理解が容易な分野ではないと感じていたことに加え,教授が不法行為法の授業を担当するのは今学期が初めてということで,今年度に限った話かもしれませんが,授業内容の構成がやや行き当たりばったりで,時間不足で一部の内容を省略するなどしたこともあり,授業についていくのは必ずしも容易ではなく,予習復習での苦労は少なくありませんでした。もっとも,George教授自身は学生にとても人気があり,また,前述のLife of the Lawで使われている教科書や契約法のケースブックを執筆して出版するなど非常に有能な方ですので,来年度以降はより良い内容になるかと思われます。